fanfic

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7.txt (6835B)


      1 カノエSS(題名未定)
      2 ノックの音と共にカノエがシャーレにやってきた。「失礼します…当番に来た板垣カノエです」モニターの奥に居るであろう先生に向けて張った、しかし、いつも通りの低い声で言った。先生はモニターの上からひょこっと顔をのぞかせてカノエと目が合うと、「いらっしゃい。来てくれてありがとうね」と言った。そのままカノエの前まで行くと、当番の席に座るように促した。それまで様々であった座面の上にカノエがまとまり、先生の方を見ていた。カノエの小さな口の代わりに、外から馴染みの動物たちが声を立てた。次に口を開くのは先生だった。「カノエ、来るの大変じゃなかった?ワイルドハントから遠いし、もし道中で何かあったら遠慮なく連絡してね」「うん」ただ息を吐き出すような返事だった。「(大丈夫だったのは)「運命だから…ね」とでも言ってやりたかったが「優しいんだね」としか続かなかった。先生として生徒の安全をまもるのは仕事で、責任で、でもそれを律儀に気にかけるのはお人好しだと思う。「そうだ、オカ研のみんなとはどう?」「……いつも通りだよ」「そっか。レナは前みたいにシャーシャー言ってる?」「うん…まだ信じてないみたい」「いつか気づくのかな。オカルトに救われてたって」「かもね…イヒヒッ」先生はオカルトは信じないタイプだと思っていたから、それが救いになっていると言い出すことなんて考えても見なかったし、カノエにとってもオカルトが救いだという考えは突拍子もないものだった。「それじゃあ、早速だけど今日の当番の内容を話すね。機密性の高くない書類仕事なんだけど、多くは支援要請とかの書類で、こっちに記入例があるから、それからズレてたり足りていない項目があるかをチェックするのが今日の仕事。大丈夫かな?」「うん」「わからないところがあったりしたらまた聞いてね。じゃ、よろしく」「はぁい」
      3 書類の束が薄くなったことを実感するくらいには仕事が進んだとき、シャーレに一人が訪ねてきた。「失礼しまーす。先生はおられますかー?」カノエは振り返って、見ると、黒髪ツインテールの猫耳の娘がいた。「あれ、出かけてます?もしかして」「はい……ただの離席なので、もうじき戻ると思います」「そうなのね……あ、当番の方?」「はい」「はじめまして、ですよね?私、アビドスの黒見っていいます」「私はワイルドハント芸術学院の板垣カノエです」「また随分と遠方から…ですよね?」「はい」「芸術の学校なんて素敵ですね」「まあ……面白いところではあります」「へぇ~」扉が開いて先生が帰ってきた。「やあセリカ、来てたんだ」「来ちゃ悪い?」「うん、嬉しいよ」「ふーん」「お帰りなさい先生」「た、ただいま?」「あ、そうだこれ」そう声を上げて黒見さんが鞄から封筒を出してきた。「もしかして、セリカからのラブレター!?」「ち、ちがうわよ。アビドスの書類!もってくって連絡したでしょ?」「そっかぁ、残念」「そんなこと言われると渡しにくくなるじゃない…」「うん、確かに受け取った」「セリカ、アビドスから来るの、大変だったでしょ?」「ま、まあね。でもやんないといけないことだから」「そうかそうか、セリカは偉いね」「ちょっ、頭撫でるなぁ」「そうだ、カノエもさ、仕事ばっかで疲れたろうし、お茶でもしない?」「平気だよ」「よし」先生は給湯室に入った。黒見さんはぐしぐしと毛繕いをしながら耳を揺らしていた。先生は湯気の立つポットを持って出てきた。カノエも椅子から立ち上がってソファーの方に集合した。「カノエって食べられないものなかったよね?」「うん」「そっか良かった」先生は上の棚から白いペンキの塗られた箱を出してきた。そのブリキの缶には「Aoharu AKAGI」と打ってあり、となりにはコミカルな絵がいくつか描いてあった。3つお茶を注ぎ終わった先生は、缶の蓋を開けてみせた。中には色の様々なクッキーが入っていた。先生は「どうぞ食べて」と言った。カノエは黒見さんの方を見たのだが、黒見さんは紅茶をふーふーしていてカップを置きそうになかった。「じゃ、お先にいただきます」と先生が端のクッキーに手を伸ばした。隣りにあったクッキーが、先生が取ったクッキーがあった場所の方へ少し傾いた。カノエも黒見さんも続く。果物の香りがして、クッキーの小麦とバターの香りもする。「二人ははじめましてだよね?」「うん」「えっと、今日の当番でワイルドハントから来たカノエと、アビドスから来たセリカ」「カノエはオカルト研究会にいて、声の表現が多彩なんだ」「んで、セリカはアビドスの借金を返すためにバイトとかを頑張ってる」「苦労人なんだねぇ」「え、いやぁ、そこまででもないような気もするけど……」「よくわからないツボを買わされたりしてたよね」「あ、あれは、本当に運が良くなるって言われたからで」「運は良くなったの…?」「わかんないわよ。あの後すぐに売っちゃったから」「オカルトの世界は偽物も多いから気をつけてね」「そ、そうなの?じゃあ、あれはやっぱり偽物だったってこと?」「わからないけど多分そう……」「ったく。あいつ、今度会ったらぶんなぐってやる…」「でも、本当のオカルトもあるよ」「なにそれ、そんなこと言って変なものを売りつける気なんでしょ!もう金輪際怪しいものは信じないって決めたんだから」「オカルトは信じる者から救われるんだよ」「な、なによそれ」「イヒッ」「先生は、信じてくれるよね。私たちの前世からの絆」カノエはそう言って先生の手を握った。紅茶の熱の奥から先生の温かさが流れ込んできた。